お知らせ

イスタンブールを旅してきました。目的は、ミマール・シナン(正しい発音はスィナン)の建てたモスクやメドレセ・ハマムなどや、ビザンティン帝国時代の聖堂の見学でした。でも、修復中のものもあり、外観すら望めないところも多く・・・ 詳しい事柄は忘れへんうちにに記事をのせます。

2011年9月7日水曜日

1-33 イスタンブール考古学博物館3 チニリキョスク1

前回は休館日ということで見学できなかったチニリキョスクは、本館から見ると人の出入りがある。
チニリキョスクとはどんな建物か。同館の『トルコの陶芸 チニリキョスクより』は、1472年、トプカプ宮殿の広大な敷地の一画、サライブルヌの林の中に建設された。
なだらかな斜面に建つ石造りの建物である。狭い屋根のついた柱廊があり、中央のアーチはコルニスで奥行きをもたせ、両側にも小さめのアーチが並ぶ。
オリジナルの木造の柱は1737年に焼失し、アブドゥルハミド一世(1774-84)のとき、石で再建された。その多角形の柱のデザインは木造を模したものらしいという。
木造の細い柱が並ぶ光景は何となく中央アジアっぽい。4本の細いミナレットがなければトルコだとは思えない。
いや、ミナレットではなかった。グーグルアースで拡大してみると、建物の上に、不均等に出ている。

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博物館の建物と比べると小さなキョスクだが、全体をカメラに収められない程には大きかった。補修されたのか、下の写真よりずっと白かった。
2階に上がると涼しげなタイルのイーワーンがあった。やっぱり中央アジア風。トルコ民族は、北東アジアから西へ西へと移動してきたので、中央アジア風のものがあっても不思議ではないか。
この細い大理石の柱の並ぶ柱廊でしばし休憩。外は30数度あるが、この柱廊では28度、日陰で細い大理石の柱やイーワーンの青いタイルを見ていると涼感が漂ってくる。
休憩やったら中庭のカフェテリアがあるのに。しかしおっちゃんはここでええという。どうも機内でよく眠れなかったらしい。少々バテ気味。そのためチニリキョスク内の写真は少ない。
中に入ると真っ白な中央の間。上は小さなドームで、アーチネットの浅い凹みも涼やか。夏用の邸宅だったのかな。そして窓は六角形の細い枠に色ガラスが填っている。この広間を小さな部屋が取り囲んでいる。
特に順路があるわけでもなさそうなので、適当に各部屋に入って見学した。各部屋は構成は同じではなかったが、六角形のコバルトブルーのタイル壁面になっていた。
ビデオから起こした画像のため解像度がよくありません。
六角形が基本で、六角形だけを貼り合わせたり、異なる形とタイルやトルコブルーのタイルと組み合わせたり、部屋や壁面によって様々に趣向を凝らしてあった。
日本風にいうと亀甲繋ぎ文だ。亀甲繋ぎ文についてはこちら
左の四角い壁龕のトルコブルーのタイルにもあったが、金彩で植物文のようなものを描いたタイル。
ところどころ四角い壁龕がある。
六点星の白いタイルを中心にコバルトブルーとトルコブルーの変則的なタイルを組み合わせた壁龕も。
最初に入った部屋には四角形の絵付けタイルがあった。
タイル セルジュク 12世紀後半 縦15㎝横34㎝ コンヤ、クルチアスランⅡ世の館跡出土
八角形と4点星のタイルを組み合わせた壁面を、このような四角形のタイルに絵付けして表している。
2種類の形のタイルを組み合わせて壁面の図柄を確認する下絵をタイルに描いて焼き上げてしまった風でもあり、このような絵付けタイルから多角形のタイルを組み合わせる壁面装飾へと発展したのではとも思わせる。
『トルコの陶芸チニリキョスク』は、24X24の正方形タイルを貼り合わせたものの断片である。白地に緑と青で下絵付け、赤、黒、黄で上絵付けをしているという。
中国の赤絵みたいだ。

タイル セルジュク 13世紀前半 8点星:縦19㎝横23㎝厚2.4㎝ 十字形:縦23㎝横21.2㎝厚2㎝ ベイシェヒール湖近くのクバダバド宮殿跡出土
形の異なる2種類のタイルを組み合わせたもの。どちらも縦横が同じ長さではなかった。
8点星は、クリーム色の地に茶と青で絵を付け透明釉をかけた八角形タイル
十字形は、トルコブルーの化粧地に黒で文様を描き、透明釉をかけて焼いた十字型のタイルという。

8点星と十字形の組み合わせについてはこちら
ミヒラブタイル セルジュク 13世紀後半 縦24㎝横29㎝厚2.7㎝
ミフラーブのムカルナスをタイルで構成したもの。ムカルナスには曲面部分があるが、この作品は、長方形と三角形の平面タイルを2つずつ組み合わせて1つのムカルナスを作っている。

ムカルナスについてはこちら
化粧しっくいの上に三角、五角、星形、菱形などにカットした小さなタイルを何百枚も貼り合わせて、たくさんの鍾乳石状の壁龕を構成し、全体で大きなミヒラブ(モスクなどでメッカの方向を示す壁の凹面)を作ったものの断片である。
青、黒、トルコブルーの釉を施してあるという。 
表面に釉薬をかけて、それぞれの形に掻き落としたものかと思っていたら、モザイクタイルだった。


※参考文献
「トルコの陶芸 チニリキョスクより」(1991年 イスタンブル考古学博物館)
「世界美術大全集東洋編17 イスラーム」(1999年 小学館)
「トルコの陶器とタイル」(高橋忠久・弓場紀知 2000年 中近東文化センター)