お知らせ

イスタンブールを旅してきました。目的は、ミマール・シナン(正しい発音はスィナン)の建てたモスクやメドレセ・ハマムなどや、ビザンティン帝国時代の聖堂の見学でした。でも、修復中のものもあり、外観すら望めないところも多く・・・ 詳しい事柄は忘れへんうちにに記事をのせます。

2007年6月6日水曜日

松屋常盤 味噌松風


松屋常盤にはもう1つおいしいお菓子がある。味噌松風という焼き菓子である。これも学生時代に買った。しかし、『誰も書かなかった京都』には味噌松風のことは書かれていない。おそらく、きんとんを買いに行って知ったのだろう。        菓子器 京焼乾山写し 窯印ム
2、3度目に松屋常盤に行った時、老齢のご主人がいた。ご主人は何を思ったのか、松風を焼いた時にできる切れ端をたくさん私にくれた。買った松風と同じくらいかもっとたくさんの量があったと思う。
いつもは来客などもあり、私が買って帰ったにもかかわらず、遠慮しながら食べていたが、この時ばかりは思う存分食べることができた。
その次に行った時は、奥さんが店にいた。そして少し切れ端を分けてくれた。
その後行った時、もらえないので「あの?、切れ端を分けてもらえませんか」と言ってみた。すると「○○円です」と白い紙袋に少量小分けしたのを買った。高くても2、3百円くらいだったと思う。百円だったかも知れない。今でも松屋常盤を訪れる度に、味噌松風の切れ端はどうしているのだろうと思う。

 数年後、TVでおいしい和菓子の店として松屋常盤が紹介されたことがある。お店はもう新しくなっていたように思う。
「どういう思いでお菓子を作られていますか?」というインタビューに、ご主人は言った「もう、邪魔くそうて、邪魔くそうて」まことに京都人らしい答えであった。
その数年後に行ったとき、きんとんがそれまでとは違っていた。代が替わったのかなと思った。そう言えば前項のきんとんの形は、以前のものよりまとまりがあるように思った。前はもっとぼたっとしたというか、形になっていない形といった風だったように思う。また代が替わったのだろうか。
味噌松風は、まず食感がなんとも言えない。見た目はきめが粗いのだが、食べるとざらついたところがない。味は味噌が入っているので多少の塩気と甘みがある。しかし、味噌が勝っているということはない。
しかし、焼き菓子なので、きんとんと違い持ち帰りに気を使わなくて済むが、賞味期限が3日と短い。段々と表面の味噌の部分が湿気を吸って、ベタベタしてくるのだ。
では、どのように保存するか?私は「味噌松風の正しい保存の仕方」を考え出した。
1 蓋を開け、張ってある白い紙をはがす
2 箱の4隅の上部をホッチキスでとめてあるので、これをリムーバーかハサミでとり、手で開く 3 四面の硫酸紙を味噌がつかないようにはがし、巻き寿司を切るように濡れ布巾などでぬらしながら等分に切り分ける。これは大の方なので、12に切り分けた。定規をあてて切ったが不等分になってしまった。
4 1つずつラップで包んで冷凍保存する。もちろん、正しい解凍の仕方もある。冷凍庫から取り出したら、即みその部分に張り付いたラップをはがし、そのまま常温でおいておく。この時お皿に置いてはいけない。何故ならくっついてしまうからだ。
この味噌松風は地方発送もしてくれるのだが、やはり京都に行って、どこか訪れた後に立ち寄りたいと思う。JR京都駅に出るなら、松屋常盤からは地下鉄烏丸線の丸太町通駅へ5徒歩分ほどである。
京都の声に、情報誌「京都」(1994.11.7発行 15号)掲載記事からの転載で松屋常磐の上田シズエさんのことが載っていた。

上田シズエ 
大正4年、伏見にある和菓子屋の娘として生まれる。23歳の時に、松屋常磐15代目の妻となる。暖簾をくぐった客がまず耳にするのは、この人の「おいでやす」の声。16代目を支えて、今も菓子作りに励む。
和菓子は餡が命どすわ。うちではずっと小豆の最高級品の丹波大納言と備中白小豆の粒選りを使っています。代表銘菓の“味噌松風”はもちろんのこと、原料を吟味せんとおいしいお菓子はでけしまへん。
主につくっているのは、お茶のお菓子。抹茶には甘みをおさえたお菓子が合いますな。うちのきんとんは、そらあ柔らかおすえ。柔らかいと作るのも厄介ですし、見た目ももっさりしてしまいます。そやけど、舌あたりがよろしいしなあ。口の中で餡がフワッととける感じです。
お客さんにお菓子をお渡しする時「形がくずれんよう、あんじょう持って帰ってください」と言うんです。苦労してつくったお菓子やし、愛着があります。そやから、ついつい口に出てしまうんどすな。
生菓子はお刺身と同じで、できたてがおいしおすわ。できたてを食べてもらいたいので、お茶会に間に合うように、夜中の2時、3時に起きて作るのもしょっちゅうどすえ。
ここへ嫁いで来たばかりのころは、お菓子の銘を覚えるのにおおじょうしました。それに、お菓子作りは手先だけのきれいな仕事のようですが、本当は重労働。
忙しいと、ちょっとも余所へ出かけることもでけしません。そんな時は、お菓子の色目を見て「秋が深まったなあ」と1人で思っています。女は縁の下の力持ち。何かこのごろ「私の人生何やったんやろ」と思うこともあるんですよ。


松屋常盤(まつやときわ)創業は承応年間(1652-55)。後光明天皇から“御菓子大将山城大掾”の名を賜る。古くから三千家をはじめとする茶家の菓匠として、お茶のお菓子を作り続けてきた。先代の15代目は、きんとんの名手と呼ばれた人。先代亡き後は、16代目を中心に、家族だけで商い続ける。代表商品の“味噌松風”は、一子相伝。御所御用の店だけに許された白い麻暖簾が、奥深い歴史を物語る。

〒604-0802  075-231-2884 京都市中京区堺町通丸太町下ル

追加情報 味噌松風の切れ端は今でも買えることがわかりました。"
moonlight journal"に今年4月18日付けで「京都で出会った和菓子たち」というブログがあった。その中に驚くべきことが載っていた。
つづいて『松屋常盤』の「味噌松風」。これは今回、実は食べる事ができなかった……!お店に入るなり“本日松風は売り切れました。あしからず”と手書きの字で張り紙が。しょぼーん。肩を落としていたら、おばあちゃんが奥から出てきて、松風のミミならあるでよと。パンのミミみたいな切り端を集めた袋を出してきてくれた。「420円です。」 あ しっかりお金取るのね(笑)
ま いいや ある意味レアだし買ってみよう。「味噌松風」のミミを購入。味はおいしくこげた味噌風味の湿めりけカステラって感じだろか。実際は“西京味噌と小麦粉に砂糖を加えて練り、表面に黒胡麻を散らして焼きあげた菓子”だそう。ミミだけでもおいしかったから、きっと本物はさぞかし。和菓子としてはダントツでツウ好みのお味。お店には富岡鉄斎の書が飾られてる。後から調べたら、『松屋常盤』のお菓子は予約制なのだとか。地方発送もしているけど基本はこのお店でしか食べれない。明治天皇や昭和天皇も大のお気に入りで、お使いの方が直々に買いに来たらしい。創業は約350年くらい前と老舗中の老舗で、ここのおばちゃんは鉄斎のお孫さんと小学校が同級生だそう。おばあちゃん、松風のミミをありがとう。とのことでした。
今度行ったら切れ端も買おう。  

追記
11年後の2018年、予約してやっと切れ端も買うことができました。そして、もっと簡単に味噌松風を取り出せることがわかりました。下の記事をどうぞ

       松屋常盤の紫野味噌松風と切れ端

関連項目
久しぶりに松屋常盤の味噌松風
松屋常盤 4月のきんとんは「深山桜」
松屋常盤 5月のきんとんは「岩根のつつじ」
松屋常盤 11月のきんとんは「梢の錦」
松屋常盤 12月のきんとんは「しばのゆき」