お知らせ

イスタンブールを旅してきました。目的は、ミマール・シナン(正しい発音はスィナン)の建てたモスクやメドレセ・ハマムなどや、ビザンティン帝国時代の聖堂の見学でした。でも、修復中のものもあり、外観すら望めないところも多く・・・ 詳しい事柄は忘れへんうちにに記事をのせます。

2017年2月16日木曜日

ウズベキスタン歴史博物館4 イスラーム時代


ウズベキスタン歴史博物館でイスラーム時代の展示の始まりはサーマーン廟かも知れない(見落としたものもあるので)。
とは言っても廟そのものを持ってくることはできないので、模型があった。もっと言うと「偉大なるシルクロードの遺産展」にも展示されていた。
サーマーン廟は、スキンチでドームを架構した建物で、正方形→八角形→十六角形→円と移行する。それについてはこちら
それが後の多くのモスクや廟のように外からは見えないので、すっきりと美しい外観となっている。それについてはこちら

建築装飾と陶器の展示

パネル 11世紀 浮彫漆喰 ミナレット建立に関する銘文
宮殿内部 12世紀 テルミズシャー(テルメズあるいはその周辺?)
組紐の交差によって作られた幾何学文、そしてその中に蔓草文も入り込んでいる。
建築装飾断片 浮彫無釉タイル
立体的な膨らみを持つ部分に二重の組紐によってできた空間に蔓草や円文が入り込んでいる。小さなモティーフの一つ一つに丸い穴があるのは、テルミズシャーの建築装飾と同じ。 
建築装飾断片 浮彫無釉タイル
上の部品よりも曲線的。やはり一つ一つに穴があるが、露も出現。
建築装飾断片 浮彫無釉タイル
縦の文様帯の1単位だろう。文様がずれないようにその部分だけ凸につくり、下部は凹ませている。
直線的な組紐によって幾何学的に区切られた空間に蔓草が浮彫されている。丸い穴はなくなるが、露のような丸い点がくっついているものがある。

下に焼成レンガの陳列
焼成レンガ 11-12世紀 カシュカダリア州
首文はハート形を上下逆さまにした文様は一筆書きできるが、イスラームでこのような文様を見たことはない。白色に七宝繋文をコの字に配する。このタイルをどのように組み合わせて並べてあったのだろう。

そしてティムール朝時代へ。サマルカンドの巨大なビビ・ハニム・モスクの模型があった。

様々な様式のタイル。そして14-15世紀のタシケントの墓廟の模型が置かれている。
モザイクタイル
これもモザイクタイル?

いろんな方法で作られたタイルの他に、モザイクタイルを作る時の道具も展示されている。
モザイクタイル
二重の蔓草文。細い曲線状の蔓をみごとに刻んでいる。

陶器とタイルの展示
染付の容器 時代不明
絵付け浮彫タイル 時代不明 アラビア文字の銘文
文字を浮き出させて白で描き、しかも赤で縁取っている。
地はコバルトブルーだけで、ウズベキスタンでよく見られる蔓草の渦巻はない。
細い一重蔓がアラビア文字の銘文に絡みながら渦巻いているものもあった。

右端には六角形のタイルが3つ並んでいる。
浮彫漆喰から無釉焼成タイル、そして施釉タイルへと壁面を飾るものは変わっていった。それについては後日

古い物はなかったが、刺繍布スザニではなく絣の反物が懐かしい。

織物 19-20世紀 ブハラ州
絹織物 19-20世紀 ホレズム地方
織物 19-20世紀 タシケント州
これは綿のよう。

木柱上部 9-10世紀 ゼラフシャン河上流オブルドン郊外の村(タジキスタンのペンジケントに近いのだろうか)
「STATE MUSEUM OF THE HISTORY OF UZBEKISTAN」(以下図録)は、この複雑に浮彫された円柱は民族学者M.S.アンドレエフによって1915年オブルドンで発見された。上に一対の優雅な鳥の頭とアラビア風の植物装飾のある円盤、そしてその下は縦溝装飾と植物文によって装飾されている。上の水平材は単純かつ優美に浮彫されている。モティーフや装飾要素は9世紀のカイロの木製浮彫パネルによく似ている。しかしながら、オブルドンのデザインはより豊かで、構成法はより新鮮でより力強い。表面を覆うデザインの多様性と複雑さは独特の美しさを与えているという。
これがウズベキスタンで見た最古の木柱。すでにイスラーム時代に入っていたが、アラビア文字の銘文はなさそう。
木柱下部 オブルドン
アーチ列が巡り、その中に蔓草文
円柱 時代・場所不明
柱頭には大きなパルメットのような文様が彫り込まれている。柱身一面に小さな幾何学文が浅浮彫されている。
柱頭
浅く細かな文様が彫り込まれている。
大きな柱頭
上面は中央に小さな孔がある。アラビア文字が彫り込まれている。
ウズベキスタンを巡って、各地で木柱を見てきたが、こんなに巨大な柱頭は見たことがない。それは、乾燥地帯なので、そこまで木が育たないからだと思っていた。下にはほぼ同じ太さの柱があったのだろうが、どんなところに使われていたのだろう。

そして出口への階段に並んでいた古い木柱の部分さまざま

おそらく七宝繋文だったが、幾筋ものひび割れで文様が分断されている。
深い鋸歯文の下には蔓草の文様帯。
この下に球状の柱礎があるのだが、ほとんど朽ちている。
七宝繋文が文様帯に使われ、その下にアラビア文字の銘文が刻まれる。
もうほとんど木に戻っている。
上にアラビア文字の銘文、下に植物文
このアラビア文字の銘文もほぼ木に戻っているが、彫りが浅いからだろうか。


  ウズベキスタン歴史博物館3 ソグドの美術
            →ウズベキスタン国立美術館1 ハルチャヤンの出土物

関連項目
浮彫漆喰から施釉タイルへ ウズベキスタン歴史博物館より
ウズベキスタンの真珠サーマーン廟1 美しい外観
ウズベキスタンの真珠サーマーン廟2 内部も美しい
ウズベキスタン歴史博物館2 仏教美術など
ウズベキスタン歴史博物館1 青銅器時代を中心に

※参考文献
「STATE MUSEUM OF THE HISTORY OF UZBEKISTAN」(ウズベキスタン歴史博物館図録) 2013年 PREMIER PRINT
「世界のタイル・日本のタイル」 世界のタイル博物館編 2000年 INAX出版