お知らせ

イスタンブールを旅してきました。目的は、ミマール・シナン(正しい発音はスィナン)の建てたモスクやメドレセ・ハマムなどや、ビザンティン帝国時代の聖堂の見学でした。でも、修復中のものもあり、外観すら望めないところも多く・・・ 詳しい事柄は忘れへんうちにに記事をのせます。

2015年6月25日木曜日

シャーヒ・ズィンダ廟群6 シリング・ベク・アガ廟


シャーヒ・ズィンダのタイル装飾の素晴らしい廟群は、まず12-16の4つで、左右に2つずつ設けられていて、みごとなのだが、参詣者が多くて撮影は困難だった。

『中央アジアの傑作サマルカンド』は、アムール・チムールの時代には、シャヒ・ジンダはチムール族の女性の廟になったという。

15 シリング・ベク・アガ廟 SHIRIN BEKA MAUSOLEUM 1385-86年
同書は、シャディ・ムルク廟の向こうに、1386年に亡くなったアムール・チムールの妹シリン・ベク・アガの廟がある。その廟の特徴とされるのは、表玄関の装飾性にある。その銘の著者はソクラトと推測されている。この廟はイラン式で建てられており、二つのドームは窓が付いているドラムの上にある。その正面や壁のモザイクの装飾は17世紀まで使われており、モワロウンナヒル地域では、他の装飾スタイルに勝る主な装飾スタイルとなっていた。内部はモルタル上の多色の装飾で飾られているという。
モワロウンナヒルは、マーワラーアンナフルと呼ばれるアムダリヤの北の地域。

全体を写すのも苦労する。
後ろに引くと逆光やし。

下から見ていくと、

一見絵付けの大判タイルのようだが、分かり易い部分をいうと、トルコ・ブルーの中央部に色の異なる1片が嵌め込まれている。これはモザイク・タイルなのだった。
この廟には浮彫タイルはなく、モザイク・タイルで文様が構成されている。あの最も手間のかかるといわれるモザイク・タイルである。
『砂漠にもえたつ色彩展図録』で深見奈緒子氏は、シャーヒ・ズィンダーにイランで熟成した植物文のモザイクタイルが出現するのは1372年建立のシーリーン・ビカー・アガー廟が最初であるという。

玄関右脇の壁面
様々な植物文がほぼ左右対称の蔓草に構成されている。
細い文様帯にも中央の柿色の枠と、2本の水色の蔓草という構成になっている。
細い文様帯は水色の巻かない蔓草。そして、3/4付け柱の基部も2色の蔓によって装飾的になっている。

玄関左脇の壁面
この中では主文のように幅の広い文様帯。緑のタイルがそれぞれ色を変えながら一つの文様をつくっていて、その外側の白っぽい蔓草が上に向かって伸びていく。
その緑の中には、水色の茎も入り込んでいて、水色の茎も別の2本の蔓草となって、細い葉や小さな花を付けながら、渦巻きながら、上に伸びている。

外側左壁
色タイルをこれだけ細くカーブして切る技術はすごい。

玄関上部
入口上
六弁化の周囲にも花文が巡り、さらに黄色い蔓が取り巻いている。この蔓は左下、左上隅、右へと渦巻を造ながら伸び、さらに水色の蔓草が入り込んでいる。

イーワーンのムカルナスは下の方だけ。
ムカルナスは曲面とならず、折れた形となっている。隅には五点星を入れ子にしてある。
同書が、その銘の著者はソクラトと推測されているというのは、この銘文のことかな。それがモザイク・タイルであることは、上図からも明らか。
頂部はというと、もちろんモザイク・タイル。少し傘をすぼめたように、細かい襞が無数にある。そして一番上は、また別の文様が、平たく嵌め込まれていて、構造体でなくなったことがよくわかる、これくらい拡大してみると。

『中央アジアの傑作サマルカンド』は、内部は、彫りの上に琺瑯を塗られた青・白のモザイクのタイルによって形成されているというが、内部の写真はこれだけだった。何故中に入ってドームや移行部を撮らなかったのだろう。
しかし、拡大してみると、やはりフレスコ画(ピンボケ)。
腰壁はモザイク・タイルだが、その上のアラビア文字の段と壁面上部の文様はフレスコ画だった。

通り過ぎて振り返るが、両側から青い壁面が迫ってくる感覚は写せていないなあ。

ちょっと裏手に回ってドームを眺める。やはり胴部の高い二重殻ドームだった。
ドームはバンナーイだが、胴部はモザイク・タイル・・・?だけでなく、絵付けタイルもありそう。

       シャーヒ・ズィンダ廟群5 シャディ・ムルク・アガ廟
                            →シャーヒ・ズィンダ廟群7 八面体の廟

関連項目
ウズベキスタンのイーワーンの変遷
イーワーンの変遷
アラビア文字の銘文には渦巻く蔓草文がつきもの
イーワーンの上では2本の蔓が渦巻く
ドームを際立たせるための二重殻ドーム
シャーヒ・ズィンダ廟群1 表玄関にオリジナルの一重蔓の渦巻
シャーヒ・ズィンダ廟群2 2つのドームの廟
シャーヒ・ズィンダ廟群3 アミール・ザーデ廟
シャーヒ・ズィンダ廟群4 トグル・テキン廟
シャーヒ・ズィンダ廟群8 ウスト・アリ・ネセフィ廟
シャーヒ・ズィンダ廟群9 無名の廟2
シャーヒ・ズィンダ廟群10 アミール・ブルンドゥク廟
シャーヒ・ズィンダ廟群11 トマン・アガのモスク
シャーヒ・ズィンダ廟群12 第3のチョルタック
シャーヒ・ズィンダ廟群13 クサム・イブン・アバス廟
シャーヒ・ズィンダ廟群14 クトゥルグ・アガ廟
シャーヒ・ズィンダ廟群15 トマン・アガ廟
シャーヒ・ズィンダ廟群16 ホジャ・アフマド廟

※参考文献
「中央アジアの傑作 サマルカンド」 アラポフ A.V. 2008年 SMI・アジア出版社
「砂漠にもえたつ色彩 中近東5000年のタイル・デザイン展図録」 2001年 岡山市立オリエント美術館