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イスタンブールを旅してきました。目的は、ミマール・シナン(正しい発音はスィナン)の建てたモスクやメドレセ・ハマムなどや、ビザンティン帝国時代の聖堂の見学でした。でも、修復中のものもあり、外観すら望めないところも多く・・・ 詳しい事柄は忘れへんうちにに記事をのせます。

2013年9月12日木曜日

ペロポネソス半島4 ミケーネ6 博物館1 祭祀センターのフレスコ画


ミケーネの博物館はライオン門から近いが、城壁を回り込んだところにある。
そこには、ミケーネ遺跡で出土したものが展示されているが、円形墓域Aから出土した通称アガメムノンの黄金マスクを初め、主要な出土品はアテネ国立考古博物館に所蔵されている。
当博物館では、一角に祭祀センターで出土したフレスコ画が展示されていた。

『ギリシア美術紀行』は、円形墳墓地Aの南に通称「南の家」といわれる遺跡があり、そのさらに南の、城壁とで挟まれた未発掘の地域から、すべて祭儀に関係するいくつかの部屋が現れた。さらに東南に接する「ツンダスの家」を含めたこの一画を「祭儀の中枢部」といっているという。
祭儀の中枢部も祭祀センターも、英語ではcult centerだ。


ちょっと強引な合成のフレスコ画。
同書は、「フレスコの部屋」と名付けられた部屋がある。中央に大きな楕円形の炉、南にベンチのあるこの部屋の東南隅に祭壇があり、壁画はその祭壇に接する東壁に描かれていたものがはがされて美術館に展示されたのであったという。
左下の両手に赤い何かを持つ女性は目立つが、右上はレンガの上の足に気付かなければ、人間が描かれているとはわからない。
2人の両側には縄目のある円柱があるので、建物内部を表しているのだろう。
同じような円柱は左下の女性の側にもあった。赤いアバクスと、3段からなる柱頭がよく描かれている。

手に穀物を持つ女神ねあるいは女神官 前13世紀中頃 ミュケナイ出土 フレスコ 等身大のほぼ半分 
『世界美術大全集3エーゲ海とギリシア・アルカイック』は、壁画は建物の中心をなす縦約5m、横3m半の、「フレスコ画の部屋」と名付けられた部屋に描かれていた。ベンチに続く部屋の一角にはそれよりやや低く祭壇が設けられ、祭壇の片方の壁面に2柱の等身大の向き合う女神、あるいは女神と女神官が描かれ、この像は祭壇脇の同じ壁面下方に小さく描かれていたる供物を主神に捧げる豊穣の女神と解釈できようという。
天井には女性の頭部が予定よりも高く描いてしまったのか、青灰色の一段が女性の上の箇所だけない。
動物は、想像復元図ではグリフィンになっていて、女神の随獣のようだ。
復元図の円柱は上が細いのか、ライオン門のように下が細いのか、よくわからない描き方をしている。
鳥グリフィンとはミノア風だなあ。
ミノアのグリフィンについては後日
ガラスの継ぎ目で顔が隠れてしまった。隣に人がいると、どうしても思うように撮れない。
その続きになるのか、右小壁にはミノア文明の牛の角に似たものが、3つ並んでいる。
牛の角についても後日、クノッソス宮殿の記事で。
この女性の上方には、次元の異なる大きさの、女神と思える人物の衣装の下部と、その女神に歩み寄る幾分小さな女性の下半身が残っていて、元来は相当大きな作品であったことが窺えるという。
右端の円柱は、上が太く下が細い。柱礎はレンガのレベルよりも下に嵌め込まれ、床面からは僅かに出ているだけだ。
その想像復元図。
中央の地面まで届く長剣を右手に持って、左手で招く仕種をしているのが女神で、槍を右手で持って目の前にいる女性は、赤と黒の小さな人間を槍にぶら下げ、女神に人身御供として差し出しているように見える。
女神の背後の花文体で壁面と天井を表した空間は何だろう。上のプランでいうと、神殿(プラットフォーム)で、女神たちのいるのは玄関ということになるのかな。この玄関には円柱はないけれど。
女神の着衣は縦縞で、縁に房のようなものが付いている。
もう一人の女性は幅広のパンツ姿。やっぱり縦縞が目立つ。
この模様は織物かな、染織?それとも絲繡?

            ミケーネ5 メガロン← →ミケーネ7 博物館2 土偶

関連項目
ミケーネ9 アトレウスの宝庫はトロス墓
ミケーネ8 博物館3 渦巻文は様々なものに
ミケーネ4 アクロポリス
ミケーネ3 円形墓域A
ミケーネ2 ライオン門
ミケーネ1 円形墓域B

※参考文献
「図説ギリシア エーゲ海文明の歴史を訪ねて」 周藤芳幸 1997年 河出書房新社
「ギリシア美術紀行」 福部信敏 1987年 時事通信社
「世界美術大全集3 エーゲ海とギリシア・アルカイック」 1997年 小学館